6.ソフトウェアは、富を生む経済活動の資源である

大槻, 2014.02.17

 ピーター・ドラッカーは、晩年の著作『ネクスト・ソサイエティ』で、知識主導社会へのシフトを唱えました。経営論の主題は、組織と組織、人と人との間の関係性です。「経営」という概念そのものもドラッカーが造り出した概念です。経済活動や社会活動の目的は、富を創出すること、適切な配分を行うこと、協調して生き延びる仕組みを造ることです。

 人、金、もの、情報が経営資源と言われていますが、ソフトウェアそのものも「資源」とみなすことができます。工業的パラダイムでは、手順化して役割を定義し、人を割当てるという属人性を排除したプロセスを構築することが、経営の一つの目標になっていました。知識主導社会では、創造的活動での人の役割や、役割分担の方法、そして、これ等の経営の方法も新しいものが必要になってくるでしょう。また、社会の制度も、アルビン・トフラーの言うような地産・地消、富の分配の方法などが変わってくるものと思われます。

 この文では、「幸福」という言葉を使っていないところに明確な意思があります。どうしても「幸福論」という見方ですと、不条理の中で幸せと思えるような考えが入りこんでしまうので、これを排除しています。あくまでも「富」なのです。「経済活動」というのも、「社会/経済活動」とすべきかもしれませんが、あえて、「経済活動」と限定してみました。無論、金銭や金融の問題のみを対象としているわけではありません。

 富を生むということは、端的に言うと、ビジネスに組み込まれて価値を生み出すということになるのですが、重要なビジネスモデルが、「プラットフォーム戦略」だと考えています[Hirano2010][Negoro2013]。大まかに言うと、プラットフォーム戦略とは、生産者/消費者、提供者/利用者の取引や交流の場を設定し、その場代を収益の柱とするものです。『経済学の船出』の中でも「関所資本主義」と評されているものでもあります。Eマーケットプレイス、銀行、自動車会社、大学などもプラットフォームビジネスと見なすことができます。Amazon、Apple、Googleが典型例です。

 ソフトウェアとプラットフォーム戦略との関係は、今後検討していく必要があると思っています。検討すべき事項は、以下の通りです。

  •プラットフォームビジネスを構成する基本要素の洗い出し
  •ビジネスモデルとシステムアーキテクチャの決定
  •開発/利用のフィードバックの方法、特に、指標の開発

 これ等の検討がまとまってきたら、アジャイル経営/開発の手法として提示することが可能になるでしょう。